6月29日 Vol.2234 農業生産者への敬意と感謝

梅雨明け宣言とは、気象庁の専管事項ですが。
しかし巷では、実際には事実上梅雨明けしていると、しばらく前から言われてきました。
そもそも、農業にとって重要なのは、気象庁の発表ではなく実態です。
喫緊の課題では、田んぼの水管理・確保には要注意です。

空梅雨による水不足や、極端な気温の上昇は、農業の現場に極めて深刻な影響を及ぼします。
僕も、現場に出る機会が多いのですが、今年は例年よりも体力的にかなり厳しいと感じます。
熱中症はもちろんですが、脳梗塞も要注意です。
いずれも、水分補給と高温対策が大事だということは皆わかっていますが、想定・想像を超える状況に翻弄され、農業生産者は四苦八苦し、それでも努力を続けています。
農業生産者の皆さんには、心から敬意と感謝を表したいと思います。

消費者やメディアでは、農作物の価格問題ばかりが注目されがちですが。
しかし、一度でも今の生産の現場を経験してみれば、農作物の価格が高いなどとは言えないでしょう。
一度でも今の生産の現場を経験すれば、地球温暖化がいかに深刻な問題であるかということを、理解することでしょう。

農水省より、7月の野菜の価格が10%以上高騰すると発表しました。
主要作物の中で、レタスは例外のようですが。
いずれにしろ、不安定な気象変動の影響が大きいことは、言うまでもありません。

コメや野菜等青果物だけではなく。
畜産業界も、未曾有の厳しい環境に直面しています。
畜産業界は、経済性とともに、環境問題も抱えてきました。
畜産の糞尿由来による、アンモニア(NH3)→硝化→脱窒→一酸化二窒素(N2O)は、地球温暖化を招き、また臭気や地下水汚染という問題もありました。
しかしここにきて、微生物の活用による強制発酵や、バイオ炭による炭素貯留など、新たな糞尿処理の取組みによって、これまでのお荷物が、逆に農業や環境に貢献する可能性が高まってきました。

備蓄米狂騒曲で、コメ価格を下げると宣言した農水大臣が、ヒーローのように映っているようですが。
しかし、日本政府による農業政策は、また大きな過ちを犯してしまったと思います。
そして、その結果として、また多くの農業生産者は廃業や破綻が進むでしょう。
政府による昨今のコメ対策は、江戸時代のコメ騒動時に大失敗した、八代将軍徳川吉宗の政策に近いものがあります。
政治的に小手先介入をしたところで、事態の本質は変わりません。
このままでは、一時的に下がったとしても、中長期的には、コメや野菜や畜産物の価格は、劇的に上がっていくことでしょう。
コメが5kg4,000円では高くて、3,000円なら好ましいとか、非論理的で感覚的な意見には、まったく賛同できません。
相変わらず、農業の本質的な構造改革には手つかず。

農業生産者の立場とすれば、政治やマスコミに翻弄されることなく、農業生産を維持・拡大することが基本です。
価格は上がっていきますし、社会的存在意義はますます高まっていきます。
しかしながら、当面この環境下では、維持・拡大することのハードルが上がっていることも、しっかり理解しなければなりません。
だから、過去の延長の農業ではなく、構造改革をした新たな農業を構築しなければなりません。

農業という産業は、人類の歴史が始まった数千年前から、もっとも重要な産業であることは明らかです。
そしていま、食料問題と脱炭素化という、世界が抱える2つの最重要課題の解消にも、不可欠であり大きく貢献するのが農業です。
農業を粗末にして発展した文明も国もありません。

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