8月5日 Vol.2243 生物多様性
脱炭素化とともに、生物多様性の保全・回復が求められている。
いまや、人間の勝手な都合で、とんでもないスピードで世界中の生物が絶滅の危機に瀕している。
自然のバランス(多様性)がどんどん壊れている。
大阪万博で、ユスリカという蚊に似た虫が大量発生して話題になった。
そうなると、当然のように、薬剤で対応しようということになる。
そもそもユスリカの幼虫アカムシは、かつて日本中にいたドジョウの主なエサであった。
ドジョウは田んぼでの農薬や環境変化に応じて、劇的に減少してしまった。
ドジョウはかつて、庶民の滋養強壮を担うたんぱく源であったが、いまや珍しい高級料理となってしまった。
また、そのようなドジョウは主には輸入モノだ。
人間の都合で、本来の生物多様性を壊し、その結果ユスリカが大量発生すると大騒ぎをしてまた化学に頼ろうとする、典型的な悪循環だ。
そもそもユスリカは、見た目は蚊に似てはいるが、ハエの仲間で、人間を刺すことはないので、過剰反応をする必要はない。
自分で火事を出して、自分で大騒ぎをして火消しにまわることを、マッチポンプと言うが、まさにユスリカのことはマッチポンプに思える。
一方で、僕がお世話になっている宮城県では、環境保全型農業が進んでおり、また冬水田んぼなる江戸時代から続く農法も取り入れ、田んぼや水路にドジョウを見ることができる。
みんなが意識して努力をすれば、生物多様性の保全や回復は可能になる。
生物多様性をきれい事だと誤解をしている人もいるが。
それはきれい事でも何でもなく、我々にとって必要なことであることを理解しなければならない。
生物多様性は、経済の足を引っ張ると誤解している人もいるが、それもそうではない。
短期的で部分的な、木を見て森を見ずということにならないように、長期的に多面的複合的に物事を判断しなければならない。
生物多様性の保全・回復を通して、自然環境を再生しなければ、農業も漁業も衰退の一途に歯止めがかからない。
それは食料危機やタンパク質不足の深刻化を意味する。
もはや世界はその悪循環に陥っているのだから、一刻も早く悪循環から脱却する必要がある。
生物多様性は、資源確保という経済合理性を含んでいることは言うまでもない。
現代科学(化学)を使った短期的応急処置だけでは、世界を長期的に安定的に維持することはできない。
僕自身、いつか余裕ができたら、田んぼを使ったドジョウの養殖にも挑戦してみたいと考えているが、いましばらくは難しそうだが。
それは、きれい事ではなく、充分に事業採算の確保ができる選択肢だと考えている。