7月16日 Vol.2297 「リジェネラティブ(再生型)農業」
世界の土壌が劣化していることを、これまで何度も指摘してきました。
このような状態を放置しては、世界の食料危機が深刻化してしまうばかりです。
複数の改善策はありますが、盲目的に経済発展を目指す社会の中では、政治的であったり、資金的であったり、様々な理由によって、土壌劣化に歯止めがかかりません。
今日のYahooニュースに、オルタナさんの記事が紹介されていました。
タイトルは「リジェネラティブ農業が世界で急拡大: トランプ政権も農業立て直しの切り札に」。
記事には、これまで僕が言い続けてきたことに近い内容が散見されましたので、以下に、その一部を抜粋してご紹介したいと思います。
以下の記事を具現化していくための起爆剤のひとつは、バイオ炭です。
記事のポイントは。
①リジェネラティブ(再生型)農業が世界で急拡大している。
②微生物の働きを活用して土壌の生態系を再生する農法だ。
③ネスレなどグローバル企業の原料調達方針も再生型農業への切り替えが進む。
世界の農業が土壌の荒廃危機に直面する中で、微生物の働きを活用して土壌の生態系を再生するリジェネラティブ(再生型)農業が世界で急拡大している。
ネスレやペプシコなどのグローバル企業も、原料調達方針において再生型農業への切り替えを進める。
次に再生型農業が伸びるのはモンスーンアジアとも言われており、日本企業の本格的な取り組みを期待する。
ペプシコは2030年までに約400万ヘクタールを目標に掲げ、ゼネラル・ミルズはすでに目標のおよそ4分の3を達成しました。
そして今年、私が最も驚いたのは、アメリカのトランプ政権の動きです。
2025年末、同政権は7億ドル(約1135億円)を投じる再生型農業の支援策を発表し、2026年6月25日には大統領令まで発しました。
意外だったのは、その語り口です。
彼らは「気候変動」はほとんど口にせず、「土壌の健康」から入っているのです。
調べるほどに、彼らが再生型農業を、気候対策の道具としてではなく、農業そのものを立て直すための営みとして捉えていることが見えてきます。
気候危機は認めないからなのかもしれませんが、それにしても、いよいよこの流れは軽視できません。
再生型農業は、「CO2を吸収する農業」と考え、そこに期待する企業も多いようです。
けれども、それは結果であって、本質ではありません。
その本質は、微生物を中心とした土壌の生態系を、もう一度「再生する」ことにあります。
土の中で無数の微生物が働き、死に、その遺物が土の粒子と結びつき、団粒という小さな構造に守られる。
炭素は、その生命の営みの副産物として、土に蓄えられていくのです。
順序が逆だと言ってもいいでしょう。
炭素を貯めるために土を操作するのではなく、土を再生した結果として、炭素がそこに残るのです。
そして生きた土壌がもたらすものは、炭素蓄積だけではありません。
微生物が養分を植物へ橋渡しすれば、肥料の使用は劇的に減らせる。
団粒がスポンジのように水を抱えれば、土壌含水量は増え、干ばつに強くなる。
世界の農業がいま直面している土壌の荒廃という切実な危機に、根元から応える力を、この農法は秘めているのです。
トランプ政権が「土壌の健康」から入ったのは、実はその本質を理解していると言えるかもしれません。
もちろん、再生型農業について、すべてを解決する万能薬のように語るのは、単純すぎます。
生きた土壌への転換には知識も時間も要りますし、土地の条件によって効き方も変わります。
それでもなお、再生型農業の核心が、「出口の数字」であるカーボンにではなく、「入口の生命」である土壌にあることは、揺らぎません。そして私たちは、これまでの農業のやり方をもう一度真剣に考える必要がありそうです。
もう一つ考えたいのは、日本国内や日本企業の取り組みがまだ極めて限られていることです。
世界で燃え広がるこの火は、私たちの足もとには、ほとんど届いていないのです。
けれど、そこにこそ大きな可能性があると、私は思います。
世界で再生型農業が次に伸びるのは、アジア・太平洋、とりわけモンスーンアジアだと言われています。
高温多湿のもと、水田を中心に、独自の土壌と農の文化を育んできたこの地域には、欧米のやり方をそのまま持ち込めない難しさと、それゆえの固有の強みがあります。
日本がこの地域で果たしうる役割は、決して小さくないはずです。
問題は、私たち自身が、その可能性にまだ気づいていないことです。
再生型農業を、温室効果ガス削減のための道具や、欧米発の一過性のブームとして眺めているうちは、その本質は見えてきません。
これは、農業そのものをどう持続可能にしていくか、という問いです。
そもそも、この数千年にわたって人間が行ってきた農業を、どう評価するのか。
そして、私たちが立っているこの土を、どう次の世代へ手渡していくのか。
きわめて深い問いが、そこにあるのです。
世界の火が燎原を焼くのを、私たちは対岸から眺めているだけでよいのでしょうか。
日本の企業が、そして日本に暮らす私たちが、この可能性に気づき、本格的に取り組むこと。
その最初の一歩を、いま踏み出すときだと思います。

