5月25日 そろそろ田植えは一巡です

この1週間だけでも、宮城2日間、静岡2日間、明日から茨城2日間と、出張が続いています。
ほとんどが、田んぼ関連です。
そろそろ、全国的に田植えがほぼ一巡してきており、ホッとひと安心です。
毎年、この季節になると、やはり日本の農業の中心はコメなんだと感じます。

ただし、巷でのコメの流通に関しては、報道の通り、相変わらず混乱が収まりません。
ますます、ひどくなっているかもしれません。

18世紀の経済学者アダムスミスは、「国富論」の中で、各個人が自己の利益を追求すれば、結果として社会全体において適切な資源配分が達成され、価格メカニズムの働きにより、需要と供給が自然に調節されると考えました。
それを神の見えざる手と表現しました。
基本的には、僕もそのような考え方に賛同しています。
しかし現実は、様々な規制や利権や暴れ回る巨額のマネーなどが阻害要因となって、自由主義だけでは経済は成り立ちません。

また、合成の誤謬(ごびゅう)も発生してしまいます。
合成の誤謬とは、何かの問題解決にあたり一人一人が正しいとされる行動をしても、全員が同じ行動をとると、想定とは逆に思わぬ悪い結果を招いてしまうことを指す経済用語です。
およそ1年前、コメが足りなくなり価格が上がると盛んに報道されるのですから、消費者が普段よりも多く購入するのは当然のことですが、その結果として消費者自らがコメ不足を助長することになっています。

そこで、国家や政治が介入して市場をコントロールすることは、時には必要なことです。
現状発生しているようなコメの便乗値上は、独占禁止法でも禁止されており、厳重に取り締まらなければなりません。

コメ小売価格は高騰前の2倍以上になっていますが、コメの生産者手取りは2倍にはなっていません。
すなわち、その差額は、中間流通事業者の利益拡大になっているということです。
実際に中間流通事業者であるコメ卸業者の利益は、史上最高レベルと言われています。

まず、直ちに国がやるべきことは。
昨年2024年の作況指数=生産量=流通量が、本当にどれだけだったのかということを、再度明らかにすべきです。
巷には、そもそもこのスタートラインが下駄を履いているのでは?という声が少なくありません。
統計のマジック(ごまかし)やバラバラのグレーディング(等級)ではなく、本当の生産量=本当の流通量を公表してもらいたいと思います。
そのうえで、いま現在、どこにどれだけ在庫されているのかを明確にすべきです。
生産者や小売業者には、ほとんど在庫はありません。
ということは、主に在庫を有するのは、中間流通事業者ということです。
そして更に、肥料等資材や人件費などが生産コストが高騰する中、コメ生産者の本当の生産原価はいくらかになっているかを明らかにする必要があります。
生産原価が明らかにならずに販売単価を決めるということは、一般産業ではあり得ません。

それらが明らかになれば、コメが本当に足りないのか否か?
コメが本当に割高なのか否か?
それらを明らかにすることが、合理的な価格形成につながります。

政治家の鶴の一声で、コメは5kg2,000円だとか、コメの運賃は国が負担しますなどと言われても、選挙向けキャッチコピーにしか聞こえません。
科学的合理性を持って説明をし、また国家戦略を構築してもらいたいと考えます。

今般のコメ騒動は、とても大きな問題であるとともに、コメにかかわらず国内農業が抱える闇の部分を明らかにする大きなチャンスでもあります。
だからこそ、徹底的に解明する必要があります。

その一方で、農業生産者は、栽培方法・品種・資材等の見直し、及び高温対策やカメムシ等病害虫対策を強化し、生産量を拡大すること、更にメタンガス等温室効果ガスを削減することで、より儲かる農業経営基盤を構築していく必要があります。
国内農業が再生する可能性のある、ラストチャンスかもしれません。

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